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7/28/2013

130728_Note_MALLworkshop 「行為の動機を行為する」

経営学習研究所(MALL)のワークショップに参加しましたのでそこからの所感を記します。


講師は、近藤良平さん(コンドルズ)、有元典文先生(横浜国大)、岡部大介先生(東京都市大)。
普段しないような行動に巻き込まれるときに、何がそれを可能にするのか、を体験、観察するような意図があったっぽいですが、参加者に何を感じて何を持ち帰ってもらうかは放り投げちゃった感じがあるようです。

TVをよく見る方はご存知かもしれませんが、近藤良平さんはNHKの「サラリーマンNEO」というコント番組で、サラリーマン体操」の振付をされていることで有名です。また彼の主宰するコンドルズというコンテンポラリー・ダンスカンパニーは、学ラン姿でパフォーマンスを行い、海外での公演も多くされているようです。(海外でも有名だとか?)私は勉強不足なのですが、その道ではかなり有名な方で、身体の動かし方使い方を長く考え続けてきた方のようです。


<コンドルズ近藤良平さんによるワークショップ>
↓こんな感じのことやりました。



・体を動かす様々なワークを実施
・ペアを作って、まずは二人で体を動かすことについての導入
 (前屈する。人に触れてから行うと、そうでない時よりも深くできる。背中合わせで相手を背負う。等)
・一人ではこわばっていて無意識に身体の動きに制限を掛けている(「私は体が硬いから。。。」と思い込んでいるとか、日常生活では使わない体の部分、筋肉があるとか)が、人と触れるだけでそれがゆるみ、自分でも思っていなかった動きができたりする。
・二人で向き合い手のひらを合わせ、腰を曲げることなく身体をまっすぐにしたまま互いの足の距離を離していく。手のひらだけで相手に体重を預け合っている状態なので、離したとたんに地面にばったり倒れこんでしまう。相手に対する信頼、それぞれの身体の状態に関する感度を高めないと不安定になります。目を合わせた方が安定する感じがしました。なんででしょう?よくわからないんですが、やはり「目を合わす」「アイコンタクト」って特別なんだなと思いました。
・背中を合わせたまま立ち座りを繰り返す。背中に体重を預け合ったまま移動する。
・ペアで手を合わせて立つ→リード役とフォロー役を設定し、手を離さないようにいろいろ動き回る。(上の動画でやっているようなこと)他のペアと合体して4人、6人、8人のグループになったりその中から別のペアとして分離したりする。応用版では、フォロー役は完全に目を閉じてリード役についていく。リード役は他のペアと相手を入れ替えたりする。
・ハイタッチ。「せーの」など言わず、相手の出してくる無言のサインに双方で合わせる。誰かとやった後すぐに別の相手を探し、一瞬の目配せでタイミングを合わせてハイタッチします。「ハイタッチしよーぜ!」光線をお互いに出して飛び上がりながらハイタッチするので、妙にハイテンションなハイタッチがそこらじゅうで発生します。
・相手の手や体の動きに合わせながら移動する。リード役ーフォロー役はあってもなくてもよい。やっているうちにどっちがどっちなんかわからなくなる不思議な感覚があります。距離は最大3メートルまで離す。それでも何とかお互いにシンクロした動きになるものでした。また、近づいてきた他のペアとスムーズに相手を入れ替えたりといったこともできました。
・最後に、一人がリード役になって残り40人が一斉にその人の動きについていく。リード役はかなり気持ちいいらしいです。



<振り返り>
・一貫していたのは、相手に体重を預けたり、タイミングを合わせないと実現できなかったり、といった、相手との協力と依存が必要なワークであったことです。


いきなりそんなワークをするのも抵抗があったりするものですが、それをうまく引き出す身体の使い方をするワークを段階を踏んで行っていくことで、自然な流れで参加者のワークに対するエンゲージメントを引き出し、全体の盛り上がりを演出していくことにつながっていたと思います。また、それなりに頑張ればみんなが参加可能な動きであったということも大事だと思いました。(それを近藤さんは明確なプランを持たずに、その場の雰囲気を感じ取りながらコンテンツを組み上げていったようです)

・身体の状態をうまく切り換えるきっかけを与えると、場全体の心理状態が変わることがあることを身をもって感じました。

よくワークショップなどの始めに実施されるアイスブレーキングなどは、自己紹介をしたりちょっとした机上のワークをやるよりは、実際に身体を使って、理想的には相手に触れたり相手への依存することが必要な共同作業を行う方が、参加を引き出す雰囲気づくりに寄与するところが大きいかもしれないと思います。

・実際にワークをする中では、相手によって少しずつサインの出し方やリードしたい/フォローしたい度、動きの大きさや方向の変え方に違いがあり、それによって自分の出力/入力の感度を変える必要がありました。また、その感度の重要性は、実際に体が触れていないワークの方が高くなるように感じました。

そういった相手への配慮や意図の汲み取るということは、同じ目標を協力し合って実現するという状況では非常に大事であるということはよく言われていることで、いわゆる「コミュニケーション能力」というのはこのことを指すのだと理解しています。これは頭では多くの人がなんとなく理解しているはずのことなのですが、身体を預け合って同じワークをしている中では、ただそれに参加するだけで意識せずとも相手の状態や意図に関する感度が自然に上がり、シンクロした動きが可能になるにもかかわらず、普段の生活や仕事の中でパートナーや同僚、関係部署の人間と協働する時には、逆に双方のちょっとした違いに起因する不信感が増すような場面がとても多いような気がします。

この差を埋める仕掛けというのは、既存の組織、業務、日常の中にどう埋め込めばよいのか、それを考えてみるのも面白いと思いました。

・何の面識もない人同士の集まりでも、その場の動機付けがうまく整えば、具体的に言えば、参加前の自分のマインドセット、参加している人達のマインドセットとの共振、それをうまく引き出すコンテンツの三つが整えば、普段なら全くしない体の動かし方、アイディアの働かせ方、人の意思や気持ちに対する感度の高まりが実現できることは改めて実感しました。仕掛けのデザインの方法により、人の集団のパフォーマンスは確実に変えられると思います。

・ワークの中で近藤さんが触れておられましたが、お互いに初対面ながらもある程度共通の関心やモチベーションをもって人が集まった今回のワークと異なり、ある程度出来上がった既存の組織の中でこういったワークショップを実施する際は若干難易度が増すそうです。(一番面倒なのは、集中力が切れやすい+斜に構えやすい中学生だそうですが (笑))
例えば会社などでは、相手のイメージや役割、立場、性格の認識についてお互いに一日何時間もそのモードになって生活をしていて、これがかなり凝り固まっていると考えられます。これを壊して皆を横一線に並べないと、ワークの際に一歩引いてしまったり遠慮してしまったりという人が出やすくなり、場がうまく温まらないのではないかと思われます。既存の組織で新たな価値を生み出しやすい行動をしてもらう仕掛けを組み込む際にはこの部分に対する配慮が大事になるということだと思います。

会社の中での役職というのは、どちらかというとオペレーションを決まったルート、プロセスに沿って効率的に処理する為の役割分担ですが、新しいアイディアを作り実現していく際には、それ以外のそれぞれの考え方や知っている情報(特に決まった業務とは関係ない部分での情報)に多様性がある方が面白いものが生まれる可能性が高くなりそうです。新たな事業に取り組む際にプロジェクトチームを作ったり、改善案を検討する際に普段の業務から離れた場を用意したりすることは、こういった「普段」の枠を外すという意味で効果があるのだろうと思いました。


・言葉だけでは全く説明がつかないのですが、普段全くしない動きを40人ぐらいの集団がペアを組みながらウゴウゴやっている状態で、ハタから見れば結構異様な光景だったと思いますが参加者はお互いほとんど面識のない人同士で汗を流しながら真剣にやっていて、拍手が頻繁に起こったりして妙な高揚感がありました。


・踊り、やりたいなぁ~、と思いました。

7/22/2013

研究命題:「イノベーションを促す仕組みのデザインと運用」(1-1.)

案の定自分の考えをまとめていくのに苦労しており、時間がたってしまいました。

以下の目次の0.が前回でしたので、今回は1-1.について述べます。
=============
0. 命題と仮説、その他諸々
1. なぜ「イノベーション」なのか?
 1-1. 「イノベーション」について
 1-2. なぜ「イノベーション」なのか?
2. なぜ「仕組み」なのか?
 2-1. 「仕組み」の定義
 2-2. なぜ「仕組み」なのか?
3. 研究計画概要
 3-1. 人間の学習・適応モデル
 3-2. 組織の適応モデル
 3-3. 研究対象及び実践
4. 卒業後について
=============

1. なぜイノベーションなのか?
1-1. 「イノベーション」について

まず簡単に「イノベーション」に関して私の認識を提示しておきたいと思います。但し、イノベーション論に関する勉強を網羅的に行ってきた訳ではないので、今後の研究の中で変化していく可能性はかなり高いですし、大上段に構えすぎたせいで案の定続きを書くのにてこずったため、少しカジュアルにいきます。恐らく当たり前のことを書くだけになると思いますが。。。


最終的にやりたいことは「イノベーションをたくさん生み出せる仕組みのデザインと導入」なのですが、「イノベーション」というのは言葉のイメージだけが独り歩きしてしまっていて、それを捉える人の立場によって解釈に幅が出すぎてしまっている印象があります。

同じ「イノベーション」を語っていても、たとえば政治家とメーカー経営者と起業家とマスコミとでは意図しているものに違いがありそうです。ということは、「イノベーションを生み出しやすい仕組み」に関する見解にもだいぶ差が出ると予想されます。日本ではイノベーションというと「技術革新」という意味で捉えられることがかなり多いのではないかと思いますが、私が捉えたいイノベーションはもう少し広いイメージがあります。ここではどういう風に自分自身で捉えているかを記述してみることにします。


イノベーションを定義するにはいくつかの要素を考える必要が出てくると思われますが、まずは今までになかったものであるという「新しさ」というのは大事であろうと思います。この場合の「新しさ」は、そのイノベーションを使用する人達にとっての「新しさ」であり、既存の技術を他分野で応用して新しい成果を生み出すといったケースや、日本では陳腐化したものを他の国で使用してみたらものすごいヒットになったといったようなケースも(あるなら)当てはまることになります。

また上記の記載の中に一部その要素が現れていますが、その新しさは単に「今までになかった」というだけではイノベーションとしては評価されず、誰かしらのニーズを満たすもの、或は何らかの目的を果たすものでなくてはならないという意味で、そのイノベーションの適用対象にとっての合目的性も一つの要素になると思われます。

さらにもう一点重要なのは、そのソリューションが「サプライズ」をもたらすことではないでしょうか。「どうせダメだろうと諦めていた」「そういうものがあればいいと考えたことすらなかった」「そういうやり方があるとは知らなかった」という状態を、考え方や組み合わせ方によってひっくり返してしまうようなもの。それがもたらされる技術やサービス、プロセスがもたらされた時に、価値の大きい「イノベーション」として受け入れられるようになるのではないかと思っています。

「新しい」「サプライジングな」「ソリューション」であること。これが私が作り出したいイノベーションのコアなイメージです。


但し上記の中で注意しなければならないのは、イノベーションとはそれを生み出したい側の主観ではなくそれを使う側の主観で評価されるということです。いくら開発側が「この新しい製品を使えば生活がめちゃめちゃ便利になる!」と思って作っても、使用側が誰一人としてそれを「新しくて便利」と思わなければそれはイノベーションとして成立はしません。「新しいけど便利にはならないね」でも、「確かに便利だよね、まぁもうあるけどね」でもダメです。     

そういった面から考えれば、定義としては「新しくサプライジングなソリューションとして受け入れてもらえるもの」とする方が、もう少し適切にイメージを伝えられるものになるかもしれません。


これが、ひとまず「で、イノベーションって何だっけ?」と問われた場合に私が答えるであろう内容です。

それでは、「なんでそれやりたいの?」という部分について、次回まとめることと致します。

7/03/2013

研究命題:「イノベーションを促す仕組みのデザインと運用」(1)というか(0)

慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科より修士課程の合格通知を戴き、順調にいけば9月より留学生用プログラムに入学して2年間の研究を行うことになりました。会社を辞めたり心配掛けたりと自分の勝手で色々な方に要らぬ御迷惑、御手間を掛けてきましたが、御蔭様で無事スタートラインに立つことができそうです。

日々の雑感をものすごーい不定期に記載してきた当ブログに、関連の考察やつぶやきなどをもう少し頻度高くポストすることを通じて、周りの皆様にちょっとずつ御恩を返していくことができればと考えています。(勿論、卒業後にもっと大きな形で返さなければならないのですが)


まず手始めに、研究を始めるにあたり、現時点での問題意識や研究の概要に関してまとめていこうと思います。長くなるので、何回かに分けて記載することになります。今のところの構成は以下。
=============
0. 命題と仮説、その他諸々
1. なぜ「イノベーション」なのか?
 1-1. 「イノベーション」の定義
 1-2. なぜ「イノベーション」なのか?
2. なぜ「仕組み」なのか?
 2-1. 「仕組み」の定義
 2-2. なぜ「仕組み」なのか?
3. 研究計画概要
 3-1. 人間の学習・適応モデル
 3-2. 社会システムの適応モデル
 3-3. 研究対象及び実践
4. 卒業後について
=============
これだけですんごい大作になりそうです。ちゃんと終わらせられるのでしょうか。。。今から不安になってきましたが、頑張ります。尻すぼみになるかもしれ。。。ならないように頑張ります。

では、早速参ると致しましょう。


0. 命題と仮説、その他諸々
研究命題は大きく出ます。ズバリ、「イノベーションは、どういう仕組みを作ったら促進されるのだろうか?」です(ポストのタイトルでネタバレしてます)。

そんな研究は世界中の経営学者とか経済学者とか社会学者とかが何十年も前から研究をしている訳で、今更私ごときが参入するような分野ではないのではないか、という御指摘はもっともで御座いますが。。。前々から、うまくいっていない人間の集団をうまくいかせる為に、どういう仕組みを作ればいいのか、というのが興味の対象でして、どういうところに行ってもそこにばかり目が行くので、突き詰めて考えてみたところ上記のような問いになってしまいました。ひとまず、(私の不勉強もあり)これまで実践に適用可能なレベルで満足のいくようなものに出会ってこなかったので、ちゃんと勉強すると共に理論を実践につなぐ為のスキルまで身に着けて社会に戻ってきたいなァと思っています。(学問の道を突き進む、ということは全く考えていません。)

現在ざっくり持っている仮説やなんとなく考えていることは以下です。
 ・イノベーションは人間が組織的に起こす方がいろいろできて面白い
 ・イノベーションの起こる仕組み、条件の理解には、人間の学習・適応プロセスの理解が必要
 ・人間の行動を変える為の仕組みを、ITシステム、制度、物理環境などを含めて統合的に設計・実装すれば、組織全体のアウトプットの変化をある程度制御できるはず
 ・仕組み設計の前提となる個々の集団の状況は同じ集団でも時を経れば変わっていく為、ソリューションは一回性のもので、ある種アートに近い
 ・個々に異なるメンタルモデルを持つ人間同士の相互作用として組織的なイノベーションを考えると、そのプロセスは複雑すぎて、汎用的なモデルを作ることは(恐らくすぐには)無理
 ・一方で、同じ人間である以上基本的な認知プロセスはある程度一般化できるものがあるはずであると共に、影響の大きなパラメータはある程度の数に絞ることができるはず
 ・上記ができれば、問題状況の認知、原因分析やソリューション実装前のシミュレーション、評価基準の設定などの為の基本的なモデリングはある程度可能なはず(エージェントベースモデリング?)
 ・数種類の構成要素による複雑な環境適応システムであるという点で、脳や細胞の動く原理は社会システムの原理を考える上でとても示唆的なものになるはず
 ・とりあえず具体的に理論を打ち立てられないとしても、研究の過程で数々のケースに触れて分析することで、そういった分野のエキスパートとして必要なカンみたいなものは身につくはず

恐らく、ちょっとエッジの効いた切り口の見せ方としては、人間の学習・適応プロセスを基に集団(社会システム)の挙動とアウトプットに関する研究を行いたい、ということになるのではないかと思います。

と、長くなってきましたので続きは次回と致しましょう。
異論反論疑問、参考情報など戴けると幸いです。
ぜひぜひよろしくお願いします。