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9/12/2013

研究命題:「イノベーションを促す仕組みのデザインと運用」(2-1.)

研究命題「イノベーションを促す仕組みのデザインと運用」のうち、後者の「仕組み」の部分について、ここに着目する理由を簡単に記述します。今日は、「仕組み」とはどういったものを想定しているか、という部分です。

2. なぜ「仕組み」なのか?

2-1. 「仕組み」の定義
ここで「仕組み」というのは、私が普段口にしている、そしてこれから大学院で学んでいくことになる「システム」と言い換えることができます。


<システムの特徴>

一般的なシステム理論に関する学習が進んでいないので、それに基づいた言及は今後に譲りますが、現時点で研究対象とするシステムの特徴として想定しているものは以下です。

・構成要素が複数存在している
・構成要素間で相互作用している
・構成要素間の相互作用によりそれぞれが変化する(適応する)
・構成要素自体もそれぞれ独自の入出力・適応プロセスを持つシステムである
・各構成要素を通じて外部環境の構成要素とも相互作用する
・各構成要素は外部環境との相互作用にも影響を受けて変化する
・外部環境との相互作用による各構成要素の変化を通じ、システム自体も変化する
・構成要素間及び外部環境との相互作用と適応のプロセスは常に存在する
・一定の臨界点に達すると、システム全体の相、秩序は大きく変わる
 (臨界点に達するまではシステムは一定の相に留まっている(ように見える))
・システムと外部の境界は、観察者による定義で柔軟に措定可能である


<システムの境界について>

最後のポイントだけが他のポイントと比較すると結構異質というか、認識論的な問題になっているのが違和感をもたらす可能性もありますが、これはこれで大事で、もしかすると、システムのデザイン、マネジメントで最も大事な勘所にもなりうるのではないかと思っています。この認識論的な境界をどう設定するか、また境界内外の差異をどのように具体化するか、が、結局そのシステムの性質を決定していくことになると思うからです。

例えば同じ「企業組織」といっても、目的によって考察や実践の対象となる範囲が変わってくることが多く、この部分に自覚的になっていないと議論の前提が崩れてしまう可能性が高いです。システムとして企業組織を考える際、それが特定の部門なのか、チームなのか、会社全体なのか、或はステークホルダーの一部まで含めていくのか、その違いにより、分析や実践の内容が大きく変わってきます。そして、それは予め何らかの方法で、観察者によって外部から定義されなければならないものです。

また、認識論的な定義によるシステムの境界の設定は、何らかの形でシステム内外の構成要素の行動パターンへの影響という形で具体化される必要があると考えています。これは、システムの挙動が各構成要素及び外部環境の要素の相互作用の結果立ち現れるものであると想定している以上、実際に境界が具現化する為にはこれらの構成要素の行動に、差異として現れる必要がある為です。意思決定パターンややりとりされるコミュニケーション・資源の内容や経路等がそういったものになるのではないかという気がしています。


こういったものから成る仕組み=システムを、研究の対象としたいと考えています。

9/02/2013

研究命題:「イノベーションを促す仕組みのデザインと運用」(1-2.)

1-2. なぜ「イノベーション」なのか?
研究対象に「イノベーション」を選んだ理由を2つ記します。

1) 純粋に興味がある
まずはじめに、単純に新しいものを生み出していくプロセスが楽しいから、ということが挙げられます。

誰でもそうなのかもしれませんが、決まったフォーマットやルーティンをこなすよりも、改善できるポイントがないかを考えたり、未来を予想しながらそれに合うようなものを考えることが好きです。より具体的にすると、そういったソリューションを考え付いた瞬間のワクワク感や、それがうまくワークした時の達成感に無上の喜びを感じます。

しかし、実際にはそれをうまく誘導することはなかなか難しく、そういった自分にもどかしさを感じていましたし、必要性が認識されながらも、多くの組織では具体的な取り組みは勘に頼って実施されていたり、或は日々のオペレーションに埋もれたり、変化することに対する抵抗感が有ったりする為に有効な取り組みがされなかったりというケースが多いと思っています。今後自分が社会の中で仕事をしていく際に、それをうまく導くことができるような方法を知りたい、また、そこに携わるからにはそれがうまく機能する理由もちゃんと理解したい、という思いがあります。


2) この先もっと必要になる
上記に若干重なる部分がありますが、イノベーションを起こすことはこの先様々な分野でもっと必要になると思われ、それに有効に対応できる知識と経験の基盤を持ちたいと思っています。

製造業における新製品や新規事業の開発、起業を想定した事業・サービスの構築は言うに及ばず、組織内のオペレーション改善や国、自治体の政策の企画や運用、地域活性化や支援活動等の市民活動、個々人のキャリアプラン等に至るまで、今までになくてサプライジングなソリューションが必要になる分野は広がっているように思われます。これは、社会の複雑度が増して様々な要因が相互に影響し合い、常に変化の度合い、スピードが大きくなっている為だというのが私の見方です。

上記の前提として、全ての社会の構成要素は周囲の環境を形成する他の構成要素と相互に影響し合って常に変化をしているという認識があります。環境の構成要素が少なければ、自らの在り方に影響を及ぼす環境の変化要因は少ないですが、これが増えるにつれて環境変化の頻度と速度は当然高くなります。この為、生存=環境への適応の為に自ら変化を起こす必要性は増し、これがイノベーションの必要性が高くなる理由だと考えています。

既存のやり方を踏襲するだけではすぐに陳腐化する為、常に先を見据えながら新しい取り組みによって自ら変化を仕掛けなければ、追いすがる事に汲々とするだけで精一杯で、やがては適応しきれずに社会から必要とされなくなり、退場を余儀なくされます。社会のネットワーク化→複雑化の流れがほぼ不可避である以上、社会に変化をもたらすような新しくてサプライジングなソリューションが必要となる場面は更に増えるはずです。